- 2015年09月19日
安保関連法が成立~終わりではなくこれから
19日未明、参院本会議で安保関連法案が採決され可決成立した。国会周辺には、
日付が変わっても多くの国民が「廃案」を叫び続けていたという。
成立阻止のために内閣不信任決議案などを連発した野党5党も、政府与党と与党
に追随した党はそれらを否決する数を有しているわけだから、ひとたび採決され
れば、ひとたまりもなく否決される。
残念ながら時間を稼いだということにしかならない。
そうは言っても、民主党はじめ反対した野党にそれほどまでの行動をさせたの
は国民世論によることは間違いない。
19日の新潟日報「論考2015」で西谷修(哲学者)は、次のように述べている。
「自らの意思を表明しなければと思う人が増え、動き、声を上げている。
景気や経済を争点に限定した選挙で多数派となった政権与党が、後はやりたいこ
とをやる。これまでなら、議席の数で及ばないと諦めていた人びとが、そんな
ことまで任せたわけではないと叫び始めた。かつてない事態である」と。
かつて(今まで)、憲法を守る「護憲運動」は、比較的年齢の高い方々や、労働
組合の運動の一環として取り組まれてきた経過がある。そしてこれらの運動は必ず
しも広がりはなく、どちらかと言えば冷ややかな目で見られていた面がある。
護憲運動を担ってきた人々にとって、最も関心をもってほしい層である若者や子供
をもつ親たちに共感してもらえていないことが大きな課題でもあった。
その「もの言わぬ」人々が、自分の意思で立ち上がったことは、大きな驚きだ。
しかしそれは、日本が戦後守り抜いてきた「戦争に加担しない」という日本国民に
(本当は)染みついていた考えや行動を現政権が変えようとしていることへの
「もう黙ってはいられない」という行動であった。あってはならない「荒療治」で
はあるが、多くの国民に自分たちの問題として考えさせ行動させたという点では
考えさせられる。
政府は「戦争法案ではない」「徴兵制などありえない」等々と言っているが本当だ
ろうか。9月3日の東京新聞は「貧困層に経済的徴兵制?」という見出しで「防衛省
で就業体験」という記事を報じている。
内容はこうだ。
文部科学省が8月末、大学生らへの経済的支援に関する報告書をまとめる際に聞い
た有識者会議において、ある委員から「卒業後に就職できずに苦しむ人たちに、
防衛省で就業体験をさせたらどうか」という趣旨の発言をしたというのだ。
山本太郎参議院議員によれば、この発言者は奨学金を貸し付ける側の日本学生支援
機構の運営評議委員だという。
これを「経済的徴兵制」と言わないでなんと言ったらよいのか。
昨年の「解釈改憲」問題では、そう大きな世論のうねりにはならなかった。
今回の法案を成立させるために、与党自民党も大きな代償をはらったかもしれない
が、政権は来夏の参議院議員選挙に向けて汚名返上の施策を打ってくるだろう。
日本人は忘れやすいと言われる。忘れてはいけない。反対を押し切り、強行的に
法を成立させた政権だということを覚えておかなければならない。
野党の動きを「時間を稼いだだけ」と言ったが、結束して対応した今回の取組み
をぜひ来夏の参院選につなげてほしい。