- 2014年01月22日
「地方選を悪用するな」という論説、本当にそうだろうか?
1月19日に投開票が行われた沖縄県名護市長選挙に、基地移設反対の現職稲峰氏が当選し、新聞各紙は1月20日(月)の朝刊でこのことを報じた。
新聞もそうだしテレビのニュースなども、「これで基地移設はすんなりとは行かなくなるかもしれない」という方向で伝えている。
すごく気になるのは、「せっかく沖縄県知事も承知して、やっとコトが収束しようとしているのに…」という意味合いで報道されているように感じられる点だ。
沖縄県知事が首相との会談で、素晴らしい内容を提示してもらったというようなことをコメントした時には大変驚いたし、こんな風に立場を変えても良いのだろうかと疑問に思った。
しかしこの知事の方針転換や態度が、本来進むべき方向に前進させる肯定すべき事だというのが前提だということか。
さて、1月20日の読売新聞朝刊でも名護市長選挙の結果が伝えられ、併せて「地方選を悪用するな」という政治部次長の論説が掲載された。
この内容も驚きだった。
主な主張の内容は、「地方と国自治体の役割は地方自治法で整理されており、国は『国家としての存立に関わる事務……全国的視点に立って行わなければならない施策を担う』としており、地方の首長選で国政の課題を争点化することはなじまない」としている。
この論説の対象は、名護市長選と東京都知事選を念頭に置いている。東京都知事選にしても「あらゆる経済活動の基盤となるエネルギー源の確保は国家の存立に関わる問題」であるから、地方の首長選を国政の是非を問う機会にするな、としているのである。
この理論がおかしいのではないかと思う点が二つある。
一つは論説している次長が、基地問題とエネルギー問題について、自身の捉え方に立って論説しているという点である。
どういうことかと言うと、基地に問題については「日本の平和と安全に欠かせない在日米軍基地」ということを前提にしている。
またエネルギー源については、「あらゆる経済活動の基盤となる」ということを重視した主張であるということである。
例えばエネルギー源の確保について、それは必要ないという人はいないだろうが、エネルギー源について何を重視するかについては人それぞれであろうと思う。
つまり「経済活動の基盤になる」という側面を重視する人もいれば、「そのエネルギー源が持つリスク」に重きを置く人もいる。また「コスト」に重きを置く人もいるだろう。
筆者の主張が前述のようなことを前提にしている主張であるとすると、「基地移設・原発問題について政府が進めようとしていることに異論を挟むな」と言うことか、と思われても仕方ない。
もう一点は、この論説の主である「地方選を国政課題についての住民投票に利用するな」という点である。
仮にこのことが正しいとすれば、その自治体の住民は、国政で大きな課題となっている政策についてその候補はどのような考え方を持っているのかを知る機会が与えられず、またそのことを投票行動に繋げられないことになる。
エネルギー源議論にしても、電力の大消費地である東京の都民が、何によって発生させた電気を使うのかを首長を決める判断の一つにすることが「地方選を悪用している」ことになるとは思わない。
この理屈で行けば柏崎市で行われる地方選において、原子力発電所に関する考えを述べてはおかしいことになるし、有権者は候補者の考えを投票の参考にできないことになってしまう。
これら国政の政策(国政の政策であるだけでなく、関係する自治体の課題でもあるのに)は、国政選挙でしか民意を問えないと断じることの方がおかしいと思う。