- 2013年07月19日
東京電力社長の説明を聞く全員協議会開催
7月17日(水)、東京電力からの申し入れにより全員協議会が開催されました。
東電廣瀬社長がじきじきに来柏し、フィルター付ベント等について原発立地市議会に説明したいということで開催の運びとなったのです。
今回の全協は、原発の新規制基準の中に示されているフィルタ付ベント設備の概要やその効果について、東京電力が立地市議会に直接説明したいというねらいがあります。
なぜかと言えば、東京電力が地元への説明がないままに、新規制基準に基づいた安全審査の申請を行うことをさっさと表明したことについて、とりわけ新潟県が反発していることが背景にあります。
新聞等でも報道されているように、新規制基準で義務付けられているフィルター付ベント設備の設置について、地元の了解を得ずに着手していることについて泉田新潟県知事は猛反発しています。
それは、東京電力との間で結ばれている安全協定に、(第3条)「丙(東京電力株式会社)は、原子力発電設備及びこれと関連する施設等の新増設をしようとするとき又は変更をしようとするときは、事前に甲(新潟県)及び乙(柏崎市及び刈羽村)の了解を得るものとする」とされているからです。
○フィルタベント設備について
川村原子力設備管理部長が説明しました。
フィルタ装置は、金属フィルタに放射性微粒子を含んだガスが通貨することで放射性物質を捕集すること、水スクラバという放射性微粒子を含んだガスを水中に通過させることで放射性微粒子を捕集すると説明。
結果、放射性微粒子を99.9%除去可能であると効果を説明しました。
またベントを行う場合は二つ考えられ、
①(注水は可能だが除熱ができないようなケース)炉心損傷を防止し、大量の放射性物質を燃料内に閉じ込め続けるためのベント
②(格納容器内での配管破断や、非常用炉心冷却系・全交流電源機能喪失などで炉心が損傷、除熱ができず圧力が上昇しているといったケース)炉心損傷後に、敷地外の土壌汚染を大幅に抑制するベント
であるとしました。
○説明に違和感
過酷事故対策は必要ないと思っていたというのは本当??
東電説明者は「これで十分安全と思い込むことが事故につながった。そういう考え方自体をしないことが重要だ」といったことを繰り返していました。
この言い方だと「自分たちはこれまで、安全のために考えられることは全てやった。しかし福島原発事故でまだやれることがあることに気付いた」と言っているように聞こえます。
しかし本当にそうなんですか??ということを私は問いたい。国会事故調の報告書には次のように書かれています。
国際基準を無視したシビアアクシデント対策
日本におけるシビアアクシデント対策はいずれも実効性に乏しいものであった。~中略~ 日本では、シビアアクシデント対策は検討開始当初より自主対策とされてきた。 ~中略~ 自主対策では、規制要件上の工学的安全設備のように高い信頼性がシビアアクシデント対策に求められない。そのため、従来の安全設備が機能できていない事故時に必要なシビアアクシデント対策設備にもかかわらず、その安全設備よりも、そもそも耐力が低く、先にシビアアクシデント対策設備が機能を失う可能性が高いという矛盾を抱えた、実効性の乏しい対策となっていた。 ~中略~ 事業者の自主的な対応であることは、事業者が電事連(電力会社の連合体)を通じて、規制当局に積極的に働きかけを行う余地を生じさせた。特に、海外の動向を受けた平成22年ごろからの規制当局にシビアアクシデント規制化の流れにあたっては、積極的な働きかけを行ってきた。
これが事実なら「そんな過酷事故がおこるなんてことは想定できなかった。だからその対応について考えが及ばなかったのだ」など言っていますが、逆に電力会社は力を合わせて規制が強化されないようにしていたことになります。
また国会事故調報告書は、なぜ電力会社が規制当局に働きかけを行ったかについて、一つには原発訴訟の際に問題にならないようにしたいこと、もう一つは規制強化によって既設炉の稼働率が低下しないようにしたいためと述べています。
まさに安全最優先ではなく、利益最優先だったのではないでしょうか。
フィルター付ベントについての説明の仕方
前述のように、フィルター付ベントは「放射性微粒子(放射性セシウム)を99.9%除去できる」と説明しています。
その説明の後には「だから大丈夫です。安心してください」という言葉が付くのでしょうか? この装置を付けたらもう安心ですよ、と言っているようにさえ聞こえます。
②の「炉心損傷後に、敷地外の土壌汚染を大幅に抑制するベント」が行われるような事態を想像してみてください。
私は同じ事象を説明するときに、そのモノの言い方というのはとても重要だと思うのです。
私の感覚からすれば
「福島原発事故を経験し、これまで設置していた耐圧強化ベントでは全く不十分であった。新規制基準でもあるフィルタ付ベントは、フィルターが付いているとは言っても、原発が非常に厳しい状況になった場合には、皆様の暮らすこの柏崎に放射性物質を出させていただくという装置である。そういう装置であることをご理解の上、設置についても理解いただけないか…」
といった言い方くらいにはなるのではないか。
自治体が頭を抱える住民避難に対してはどうするの?
東京電力が提示した資料には、「ベント実施の際には、確実に通報連絡を行うとともに、避難の状況、気象条件等を考慮」と書かれています。
またおまけに「福島第一原子力発電所においても、初回のベント操作実施に先立ち、通報及びプレス発表を実施」とも書かれています。
「福島でもちゃんと連絡してからベントしたよ」と言いたいということでしょうか。
実際の過酷事故時に、避難状況などを十分に見極めてからゆとりを持ってベントするなどという余裕はあるのでしょうか?
「ベントに関わる具体的な手続きや連絡調整について、国や自治体の防災計画を踏まえ、良く調整させていただく予定」と書いてあります。
ベントが行われる可能性は、防災計画や避難計画を立てる前提としなければなりません。「良く調整をする」ことによって、市民にとって安全なベントがあり得るのか??とも言いたい。
いずれにしても「ベントが行われる可能性ありということはちゃんと言いましよ。自治体はこれを踏まえて計画を見直して下さいよ」というような言いっぱなしでは困ります。