• 2012年05月30日

柏崎刈羽原子力発電所の過酷事故における対策の考え方(事務局暫定案)

5月28日(月)自治体議員連合の研修会が開催されました。

自治体議員連合は、自治労新潟傘下の組織で、新潟県内の市町村議会と県議会の議員で構成されています。

福島の原子力発電所過酷事故以降、柏崎刈羽原発を抱える新潟県としては、原発の問題は柏崎刈羽のみの問題ではないという認識に立って、自治体議員連合としてシリーズで原発学習会を実施しています。

この日は、新潟県原子力安全対策課の課長を迎えて、「柏崎刈羽原子力発電所の過酷事故における対策の考え方(事務局暫定素案)」についてお話を伺いました。

原子力安全対策課の須貝課長は、まず国における原子力防災対策の動き(原子力安全委員会「防災指針」見直しに関する考え方(中間とりまとめ)と今後の作業)について説明した上で、新潟県における防災対策の方向性(事務局素案)について説明。

新潟県は、地域防災計画について、国の事故検証などの完了を待たず、できるところから見直していくという方針で、検討を進めています。

その検討の結果、現時点でまとまっているのが「事務局暫定素案」です。

事務局暫定素案のポイントは次のとおり。

①対策を講ずるのは「県内全域」であることを明確化: 発電所から半径5㎞は“即時避難区域”、半径30㎞は“避難準備区域”、半径50㎞は“屋内退避計画区域”とし、それ以降の県内全域を“放射線量監視区域”とするとしています。

②市町村長による避難指示を明記: 市町村外への広域避難を想定した、知事による避難調整や避難指示の他に、知事の避難指示を待たずに市町村長が避難指示を行うことを明記しました。

③受入市町村の事前調整と避難者のケア: 避難する市町村と受入市町村は、あらかじめ、県が調整。避難者のケアは初動時に受入市町村が実施し、その後避難対象市町村に引き継ぐことを明記。

④避難対応には実測の他、予防的手法を併用する: 国の示した方向性では、「計測可能な判断基準に基づき避難対応する」としているが、この案では、計測可能な判断基準であるモニタリング結果の他に、発電所の状況や発電所に近い地域での線量、風向などを考慮することを明記。

⑤県外避難の検討: 県内での避難が困難になる場合も想定して、近隣県への避難の検討を進めること記載。

などです。

この事務局暫定案の説明に対して、参加した議員からは様々な質問が。

・全県でモニタリングするとのことだが、機材の整備はどうするのか

・このような事態に、自主防災組織も活動するという前提か

・そもそもこの素案の位置づけがわからない。各自治体にこの案を参考にして下さいという意味か

・避難時には車を使う人が主であろうが、30キロ圏内にどのくらいの自動車があって、どのように移動するというシュミレーションはあるか

などです。

私が最も不安に思うのは、やはり避難の仕方と避難先です。

暫定案では、避難する市町村と受入市町村のマッチングは、あらかじめ県が調整するとしています。

またこの避難先市町村は、避難準備区域内の市町村ごとに、“複数”になるように調整し、また避難施設の調整も行うとしています。

例えば、県境に近い県内自治体に避難の受け入れをお願いしておいたとします。

しかし、実際に過酷事故が発生して、その受入自治体も避難を余儀なくされたというような場合には、「あらかじめの約束」通りにはいきません。

また、福島の原発事故時に、県境を越えて福島県から避難者が新潟県に来られた時、放射線の測定や除染のために混乱しました。

受け入れると表明しただいた自治体では、こうした対策を準備することが必要になってきます。

第一、他の議員が質問したように、果たして「受入自治体」までたどり着けるか??ということが大きな課題でしょう。

そうして考えてくると、計画はあっても過酷事故時に果たして機能するのかという、そもそもの疑問がわいてきます。

新潟県が、「できるところから修正していく」という姿勢で取り組んでいただいていることは、大きな評価に値します。

しかし、懸命に準備をしたとしても、ひとたび事故が発生すれば、その中身は非常に過酷であることを、私たちは経験してしまったのです。