- 2011年12月18日
原発のコスト
この書き込みで100号になります! ご覧いただきありがとうございます。
12月17日(土)長岡市で、新潟県平和運動センターが主催する「ワイズエネルギー
ライフ講座」が開催されました。これは、様々な角度から脱原発の必要性について
学ぶ講座です。今回は8回目で、立命館大学国際関係学部の大島堅一氏をお迎え
して、「原発のコスト」について講演いただきました。
大島氏は環境経済学という専門分野の立場で、長い間、原発とコストと可能エネ
ルギーについて研究を続けてこられました。現在は国のエネルギー基本計画を
策定するための「コスト等検証委員会」の委員をされています。
今回の講座のポイントをまとめると、次のようになると思います。
・「多重防護によって守られて過酷事故は起きない原発」という神話が完全に崩れた
・再生可能エネルギーに移行するのは、そこに利益が生まれるからである。「脱原発依存」がコストばかりが膨らむというのは、再生可能エネルギー移行によって生み出される利益をあえて言わない脅しである
・エネルギーは原発からだけしか得られないものではない。エネルギーを得るのに命をかける必要はない
・3.11後の国のエネルギー政策議論は楽観できない。これまで通り原発政策を進めるべきと信じ込んでいる委員が多い。国民は十分に注視・監視すべきだ
大島氏が委員をつとめるコスト等検証委員会が、原発による発電コストはこれまで
言われていたような安価ではないという数字を出しました。 新聞などでも報道され
ましたね。
政府による再計算で、原発コストは次のような概算値になると言います。(2011年)
・(想定には色々バリエーションがあるが)出力120万kwで40年間、設備利用率70%で運転したとする
・核燃料サイクルは、使用済燃料の半分を20年間貯蔵後にその半分を50年後に再処理という現状モデル
・結果は、①資本費2.5円/kwh、②運転維持費3.1円/kwh、③核燃料サイクル費用1.4円/kwh、④追加的安全対策費0.2円/kwh、⑤政策経費1.1円/kwh、⑥事故リスク対応費用0.5円/kwh以上 合計 8.9円/kwh 以上になるとしています。
従来言われていたコストが5.3円ですから、少なくとも1.7倍以上にはなるということ
を示しています。たとえば太陽光発電コストは、現在33.4~38.3円/kwhから今後
9.8~20.0円/kwhに下がるということも試算されていますから、その差はどんどん
縮まることになります。
大島氏によれば、コスト検証委員会での議論で相当な反発があったもの、コスト
計算に「社会的費用」を算入させたことが画期的なことであるとしています。
社会的費用とは何か?温室効果ガス対策費用や、事故リスク対策費用、政策経費
です。
福島の事故を見れば、このような経費は算入した上でコスト計算するのが当然ですし
そのことに反対する委員がいまだにいるということ自体信じられません!
またもっと言えば、これまでの5.9円/kwhの中にも社会的経費は入れて計算されるべ
きものなのです。その経費も含めずに計算されて、「安い」と信じ込ませていたこと
が許せません!
また大島氏は、この日の本題である「脱原発のコストと便益」についても次のように
話しました。
A脱原発のコスト=燃料費(火力の焚き増し分)+再生可能エネルギー普及費用
B脱原発の便益=原発の発電費用+バックエンド費用+財政費用(交付金など)+事故費用
AとBを比較すると、Bの便益の方が大きくなり、決して安全のためだけに再生可能
エネルギーを推進するのではなく、そこに便益があるからだとしました。
会場からは、脱原発で雇用は守ることができるかなど様々な質問がだされましたが、
この雇用の課題にしても、ドイツの例などを見るまでもなく原発よりも再生可能エネ
ルギーの方が多くの雇用を生み出すのは明らかだとしました。
原発が安全かどうかの議論をしていくと、でも再生可能エネルギーならものすごく
コストがかかるかそれで良いか、というような議論にすり替えられていくことが
多いようです。
しかし、原発を続けている方がむしろコストが嵩み、しかも再生可能エネルギーに
かえた方が利益もあるというのなら、一般的に指摘されている課題はほぼ解決される
と言ってよいでしょう。
「再生可能エネルギーなら、今回のようなシビアアクシデントは起こらない。
トラブルが起こったとしても、それは人間がコントロールできる範囲だ。」
と大島氏は結びました。